君の名は。から感じた過去作の空気
はじめに
映画「君の名は。」おそらく知らない人はいないいだろうというくらい毎日メディアに取り上げられています。興行収入も100億円を超え、ジブリの名だたる名作と肩を並べるまでになっています。
今までの新海作品といえば、心のグサッと突き刺さる、気軽に楽しむには少し重い話が多かった印象ですが、今作はエンターテイメント性を重視したという監督の思惑どおり、年齢問わず多くの人に楽しまれている印象です。
ところで、以前から新海監督の作品を見ていた方にとっては、本編の物語や作画などは言わずもがな、過去作品のオマージュも多く、違った楽しみ方が出来たのではないかと思います。私もそのうちの一人です。
そこで、忘れないうちに、私が確認できた範囲になりますが、過去作品にあったような人物や建造物、演出などを書いておこうと思います。
修正点や追加点があればご指摘いただけると幸いです。なお、作品が公開されて間もないため、画像の欠落がいくつかあります。
風景、人物、小物、など
アイショップ
▲ 三葉の通学路にあるコンビニ。*1
▲ 秒速5センチメートル第二話「コスモナウト」に登場するコンビニ。
おなじみのアイショップ。秒速5センチメートルを見た方はピンと来たかもしれません。これからも、東京ではない田舎を象徴するものとして登場するかもしれませんね。
BASEのスピーカー
(画像は後日)
▲ テッシー、さやちん、三葉が作戦会議をしていた部室に登場。
▲秒速5センチメートル、小山駅のホームの描写で登場
フォントやスピーカーの形状的にモデルとなったのはBOSEのスピーカーだと考えられます。
テッシーとさやちん
映画で登場するのは「君の名は。」が初ですが、小説「言の葉の庭」で相沢祥子の中学時代の友人として同名の人物が登場しています。
余談ですが、小説だと相澤祥子や孝雄のお母さんといった劇中ではスポットが当たっていない人物の心情や過去を知ることができます。
ユキちゃん先生
(画像は後日)
▲ 本作に登場したユキちゃん先生(cv. 花澤香菜)。古典教師。
▲ 言の葉の庭に登場する雪野先生(cv. 花澤香菜)。古典教師。
三葉が授業を受けているのは2013年。
そのとき雪乃先生は東京or愛媛の実家にいるので同一人物であるとは考えにくいですね。ユキちゃん先生はおそらく雪野先生のドッペルゲンガーか何かでしょう。
ラブレターを渡す女の子とそれを見守る二人の友だち
(画像は後日)
▲ 三葉(中身は瀧)に惚れ、手紙を渡そうとする女の子。それを見守る二人の友だち。
▲ 雲の向こう約束の場所で拓哉に思いを寄せる女の子。それを見守る二人の友だち。
こう比較してみると、人物作画の進化が目覚ましいです。(画像が無くてすいません)
演出
レンズの光芒
▲ かたわれ時のシーン
▲ 秒速5センチメートル第一話「桜花抄」より、小山駅のホームに電車が入ってくるシーン
画面を二分するように大きく縦に伸びる光線とそれを横切る光線が十字を成しています。作品に登場する光芒の形は様々ですが、光がメインになるシーン、とりわけ中央に光が現れるシーンではほとんどこの形な気がします。
町役場の放送
「こちらは糸守町役場です.....」といった町内放送が劇中で何回か流れます。
秒速5センチメートル第二話「コスモナウト」でも同じようなシーンがありました。
▲ 「コスモナウト」の町内放送のシーンの1カット
町内放送と町の風景のカットが合わさることで、東京ではないどこかの田舎の空気を感じ取ることができます。シーンの切り替わりによく登場する印象です。
セリフ
体言の繰り返し
瀧「あの日。星が降った日...」
貴樹「あの日。あの電話の日....」
▲ 秒速5センチメートル第一話「桜花抄」より、主人公の貴樹の電の中でのセリフ
一つ目の句点から次のセリフまでの微妙な間がミソな気がします。
主人公とヒロインのセリフの重ね合わせ
瀧 「それはまるで......」
三ツ葉 「まるで、夢の景色のように、ただひたすらに.....」
瀧&三葉「......美しい眺めだった。」
孝雄 「今まで生きてきて、今が....」
雪乃 「今が一番....」
孝雄&雪乃 「....幸せかもしれない。」
▲ 言の葉の庭の後半部分、二人の共通の感情を言葉にしたシーン
美加子 「私たちは、宇宙と地上に」
美加子&昇 「引き裂かれる、恋人みたいだね」
▲ ほしのこえ予告編より
新海監督のデビュー作、「ほしのこえ」から見られる演出であることから、新海作品を引き立たせる重要な手法であるといえます。
主人公の男女の声を重ねることで、一体感を演出、視聴者を作品世界へ引き込む狙いがあるのではないかと考えます。
半分
瀧「これが、あいつ(三葉)の半分。」
▲ 瀧が口噛み酒を飲むシーン
「君はこの世界の半分」
▲ Z会「クロスロード」のCM、やなぎなぎさんの「クロスロード」の歌詞の一節
劇中で、口噛み酒を(納めた人の)半分と表現しています。
普通だったら半分とは言わずに、一部とか片割れとか言いそうなものですが、あえて半分と表現していることから、やなぎなぎさんの「クロスロード」の歌詞を意識しているのではないかと思いました。
ストーリー面では、田舎に住む女の子と都会に住む男の子という対比構造が共通していますね。
以上、私が確認できた過去作のオマージュと思われるものです。
最後に
「君の名は。」では今までの作品では見られなかった演出が多く登場しました。
例えば、オープニングそのものであったり、凄まじいカメラワーク*3であったり、タイムラプス*4であったり....
しかし、全部が全部新しいというわけではなく、過去作を彷彿させるような演出や建物セリフも多く活用されており、以前の作品もしっかりと尊重する姿勢に感心しました。
「君の名は。」は過去作の良いところ、そして革新的な演出その他諸々が結集して作られたものであり、過去最高傑作と呼ぶに相応しい作品だといえます。
円盤が手に入ったら、しゃぶり尽くすように観てやろうと思います。
それでは。